同一労働同一賃金について
2013年旧労働契約法20条により有期労働者の労働条件が無期労働者に比して不合理な条件であってはならない、と定められた
その後旧労契法20条が2020年パート有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)8条9条に継承、改正して定められた
パート有期法8条9条は以下の構造となっている
パート有期法9条
まず全体を規定するのは9条の「職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)」にある
つまり①職務の内容②配置の変更、において無期労働者とパート有期労働者に相違のない場合、「待遇について差別的取り扱いをしてはならない」としている
①②において相違ない場合は労働条件に差異を設けることはできないのです
これは結構大きな規定で、中小においては①②について合理的に差異が説明できないところが結構存在する
そうするとそこでは労働条件の差異はすべて差別的取り扱いと判断される可能性がある
パート有期法8条
①②において工夫して差異を設けている場合は全体で差別的取り扱いとされることは無いが、次に8条に適合するかどうかが問われる
「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」の部分です
「基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて」検討が求められ、「待遇の性質」「待遇を行う目的」が適切でないと差別的取り扱いとなる可能性が高い
これは旧労契法20条の「その他の事情を考慮して」という表現に比して具体的な労働条件の内容に踏み込んで判断が求められているといえる
しかもその判断は、就業規則などの形式的な定めがあってもより具体的な事実が優先するといわれている
例えば賞与支給をどのような性格のものとして(例えば賃金補給、インセンティブなどなど)支給しているか
例えば精勤手当は従業員の出勤率を確保する目的で支給しているのであれ、ば雇用形態によって支給、不支給が相違することに理由があるのか
など、8条は旧労契法20条に比して待遇の相違により厳しい判断を求めているといってよいと思う
パート有期法14条2項
またパート有期法14条2項 「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない」となっている
パート有期労働者の待遇が相違するとき、労働者は会社に相違の内容、理由、講じた措置について説明しなければならない、となっている
ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件などはすべて旧労契法20条時代の係争であり、同一条件で争ったとしてもパート有期法では違った判断が出る可能性はある
最高裁名古屋自動車教習所事件(2023年7,20)では定年再雇用者の労働条件について、それぞれの待遇の性質、目的をを具体的に検討、確定することを求めて下級審に差し戻した
これはパート有期法8条に沿った判断だといわれている
労働条件の相違はすべて棚卸しをし、いちいち説明を求めねばならないでしょう
以下参照条文
旧労働契約法20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
パート有期法
(不合理な待遇の禁止)
第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。