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技能実習?育成就労?

近所にいる外国人

難波や梅田で多くの外国人観光客と出会う。

コンビニで外国人店員が販売しているのは普通の日常だ。

身近に外国人が行きかっている最近になって、政権党が外国人排斥の旗振り役に躍り出た。

高市首相は外国人政策担当大臣を新設、「秩序ある共生」をスローガンに強硬な外国人対策を行うと宣言している。しかし今のような外国人労働者を導入する制度を作ったのは歴代自民党政権ではないか。どのクチで「秩序ある」とか言うてるのか。

外国人犯罪が増え治安が悪化したとか、水源地周辺を外国人が買い占めている、とかのデマにはそれなりの対応があるだろう。

身近で働くようになった外国人労働者が国籍如何で劣悪な状況に追いやられることに我々労働組合は加担できない。そのようなことはいずれ自分の身に返ってくることだからだ。

許可されて日本に

昨年日本に「在留」する外国人(短期滞在観光客等は除く)は約396万人、そのうち雇用されて働いている人は257万人だ。

人口の約3%、雇用労働者の4%強は外国人だ。

日本社会の人手不足の雇用の場では外国人の存在感は大きい。

日本に在住する外国人は出入国管理庁(入管)から在留許可が出ている人たちだ。

在留許可は二種類あって、特定の活動(仕事)ができる資格と、特定の身分等に基づく資格がある。いわゆる「難民」もこれらの制度の枠内にある。

特定の身分とは、ブラジル等の日系人などの定住者や、特別永住者、永住者と呼ばれる人たちで、従事する仕事に制限はない。

前者の仕事に関連付けた資格には商売人や専門的な業務などにつく人の他に、技能実習(2027年から育成就労に変更)特定技能1号、2号という在留資格がある。

技能実習から育成就労へ

育成就労、特定技能は許可業種制となっており、介護、製造業、農林漁業、建設業などの労働現場だ。ビルメンテナンスも許可業種である。

昨年末で技能実習は45万人、特定技能では34万人の人たちが働いている。

技能実習が国の制度として始まったのが1993年、特定技能は2019年である。

2019年の国の方針では、2023年度には技能実習、特定技能併せて34万5千人を入れる予定だった。

既に昨年実数79万人でこれを大きく超えており、2028年度には123万人、50%増を予定している。つまり国は一貫して外国人労働者拡大方針をとってきたのだ。

始まりは人手不足、求人難

技能実習制度が始まったのが1993年。バブル景気末期、人手不足で多くの企業が悲鳴をあげていた。

このころ太平ビル東京支店では、新聞求人の応募は外国人がほとんど、大阪支店では求人経費で利益が全部吹っ飛んだ。

このようなときに技能実習制度は産業技術の途上国移転のための研修を名目に「国際協力」として始まった。

自民党政権(とりわけ安倍首相)は「移民政策はとらない、定住外国人は不要」と国内向けに主張した。

技能実習生は日本に稼ぎに来ているのではなく研修に来ている、転籍していては仕事を覚えられない、という理屈で転籍禁止(勤め先を変える)とした。

実際は深刻な人手不足に悩む企業の要望を受け、安価な労働力として外国人労働者を招請した本音を隠して。

外国から「人身売買」「現代の奴隷制」とまで言われる技能実習、特定技能で働く外国人が直面する諸問題は、この自民党政策の二面性の帰結である。

「人身売買制度」の始まり

制度発足当初、技能実習生は1年しか滞在が許されなかった。その後受け入れ企業の要請もあり改編が繰り返され5年まで延長したが、その間も転籍は出来なかった。

最低賃金も支払われなかったり、タコ部屋のようなところに押し込められたり、といった劣悪な労働環境は、転籍できない制度が可能にしたものだ。

ひどい環境でも転籍が出来ない制度が、パスポートを取り上げたりするような使用者に絶対有利な関係を作った。

労働者が劣悪な環境から逃れるすべは「失踪」して「転籍」するしかない。

逃げ出した労働者は2024年までの5年間に47000人、この人たちは在留資格違反(転籍した)の不法滞在者、オーバーステイとなってしまう。

在留期間中に家族帯同は許されておらず、若い労働者同士が一緒になって子供が出来てもともに暮らすことはできない。

また彼らは、本国と日本双方でブローカーの手を経て来日している人が多く、はなから多額の借金で縛られ働き始める。

育成就労でも改善しない

この30年の間、在留期間の延長など弥縫的な手直しは行われたが、研修という偽りと転籍制度は維持され、そのため受け入れ態勢や労働条件の整備も進まなかった。

今般政府は「外国人育成就労法」を制定し従来の方針を転換、日本の技術を本国に持ち帰ってもらうための研修、という建前を投げ捨てた。

育成就労制度の目的を「人材育成、人材確保」とし、労働力確保のためということを認めた。

しかし従来3年間不可だった「転籍」は、新制度でも残された。

政府は条件次第で1年から2年で転籍可能になり改善されたという。しかし詳細にみれば、育成就労する90%以上には2年の転籍制限がかかっており、実質3年を2年としたものだ。

期間内に転籍が認められるのは虐待や人権侵害状態が明らかになった時等厳しい制限がかけられている。

また転籍先は同一職種内に限る、首都圏など大都市へ転籍させない制限をかけるなど、転籍不可で起こる使用者との力関係の隔絶解消にはほど遠い。

在留年限の制限なく、家族帯同も許可され、日本定住の可能性も開ける「特定技能2号」が育成就労で入ってくる外国人の目標だ。

しかし2号にたどり着くのに育成就労3年と特定技能1号5年の時間が必要だ。最初の2年は転籍禁止、合計8年は家族帯同も出来ない。

労働法規は入管法に優先する

転籍不可という制度自体、日本の労働法を逸脱している。

労働契約法では有期契約の最長は3年だが「やむを得ない理由」があれば(誰でも普通に辞めてるけど)契約期間内でも退職→転籍の自由がある。無期契約の正社員はそのような留保なく退職できる。

労働基準法では有期契約でも1年を超えれば理由を問わず申し出さえしたらいつでも退職できる。

こういった労働契約解約の自由を日本の労働者に認めているのは、戦前広く見られた人身売買を伴う強制労働等の人権侵害を防ぐためだ。

日本人には無く、外国人にだけ適用される転籍制限は、つまるところ「すぐやめられたら採用経費が回収できない」「都会に逃げられたら困る」などの使用者の都合を反映したものだ。

そもそも多少の制度改善に方向を変えたのは、近い将来の深刻な人手不足を控えて、前記の「人身売買」批判などもあり、アジア各国からの労働力争奪戦で韓国、台湾などに遅れを取り始めているからである。

日本国憲法は職業選択の自由、居住、移転の自由を定めている。また奴隷的拘束および苦役からの自由も同様だ。

日本国内で労働する人々が、外国人だからという理由でこれらの基本的人権さえ確保されない状態は労働組合でなくても看過できない。

一部手直しをしたとはいえ、いまだ研修のための制限というお題目を唱え、その実使用者の採算性を優先するための転籍制限は廃止しなければならない。

このことと外国人がどのように働き、日本国内で暮らしていくかという制度設計とは、また別の次元の問題だ。

馬鹿げた外国人排斥を煽るのではなく、人権後進国との国際的評価を覆すよう政府自民党に求めなければならない。

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働いて、働いて、働いてまいります(by高市)

「働きたい改革」の真の狙いは、時間外労働の上限規制緩和だ

高市首相は自民党総裁選挙に臨み、「働いて、働いて、働いてまいります」と宣言した。しかし、首相が身を粉にして働くという「頑張り」や「過労」の話ではない。その後に続いた**「働きたい改革」**という言葉を見逃してはならない。

高市首相は就任早々「日本成長戦略会議」を新設し、安倍政権が推し進めた「働き方改革」の見直しに着手した。その目玉が「働きたい改革」である。具体的には、現在の時間外労働の上限規制(月間100時間、年間720時間)の緩和や、裁量労働制の拡大だ。規制を緩和して「もっと働きたい」と訴えるが、一体誰が「もっと働きたい」と言っているのだろうか。戦略会議で規制緩和を主張しているのは経団連と日本商工会議所である。彼らの本音は「もっと働きたい」ではなく「もっと働かせたい」に違いない。過労死労働者の遺族は高市首相に「長時間労働を美徳に戻さないで」と抗議したが、これは決して杞憂ではないのである。

安倍首相の遺産「働き方改革」を崩す「働きたい改革」

これまで長時間労働是正の試みは遅々として進まなかったが、安倍晋三首相が推し進めた2018年の「働き方改革関連法」により、初めて労働基準法に罰則付きの上限が設けられた。これは労働時間法制の画期的な進展であり、保守派の代表とも言われた安倍氏が実現させた功績である。高市首相は「もっと働きたい人がいる」という論理でこの規制をなし崩しにし、安倍氏の功績を無きものにしようとしている。

「働き方改革」が抱える危うい到達点

日本の労働時間は労働基準法で規定されている。第32条には「1日8時間、1週40時間」を超えて労働させてはならないと明記されているが、労働基準監督署長に届け出れば延長できる「36協定(サブロクキョーテー)」という例外措置が存在する。

通常は「月45時間、年360時間」が目安だが、特別条項を設ければ「年720時間」まで延長可能となる。さらに、一時的な需要に対応するため、「月100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」という基準が設定されている。

この基準こそが、いわゆる「過労死ライン」そのものである。 監督署が過重労働による脳血管・心疾患を労災と認定する目安がこの数値である。月100時間を超えるような労働をすれば睡眠時間が削られ、疲労が回復せず、疾患のリスクが急激に高まるとの医学的見地から算出されたものだ。

さらに自動車運転手については年間960時間という例外的な上限が設けられており、これは毎月80時間の時間外労働を前提としている。過労死基準を大きく逸脱しているにもかかわらず、運送業界はこの上限さえ緩和するよう強く要望している。

罰則付きの上限規制を設けたはずの「働き方改革」も、残念ながら「過労死してしまう」時間数を上限としているのが実態である。高市首相の「働きたい改革」は、この危うい上限さえもさらに緩和しようとするものである。

一方、首相の検討加速指示を受け、上野厚生労働大臣は「上限が過労死認定ラインであることを踏まえて検討する必要がある」と述べた。この発言には、従来の「働き方改革」と今回の見直しとの矛盾が垣間見える。

100年前のILO条約すら批准できない日本の現状

日本の時間外労働規制は、国際水準と比してどうだろうか。 1886年のメーデー暴動(シカゴ)などを経て、ILO(国際労働機関)は1919年に第1号条約で「1日8時間、週48時間」を定めた。ところが日本はこの第1号条約すら批准できていない。日本政府の説明では、現行の労働基準法上の時間外労働規制が、条約の求める「厳格な許可要件」に達していないためとされている。 つまり、「働き方改革法」をもってしても、100年以上前の国際基準に達していないのだ。高市首相は、ここからさらに逆行し、規制を取っ払って無制限の長時間労働を可能にしようとしている。

変遷する労働時間規制の歴史と「過労死」の出現

日本の労働時間の最低基準が初めて定まったのは、1947年の労働基準法である。しかし、時間外労働規制は事実上野放しに近く、経済大国化と共に「エコノミックアニマル」と批判されるほどの長時間労働が常態化した。

その後、1986年の「前川リポート」などを経て、1987年に週40時間制が法制化され、1994年に実施された。現在の現役世代のほとんどは週休二日制以外を知らない。 しかし、労働時間規制が進む一方で、この頃から「過労死」という言葉が社会に現れた。

この背景には、時間外労働が事実上青天井だったことに加え、週40時間制の実施と引き換えに、変形労働時間制や裁量労働制など「柔軟化」という名の規制緩和が進められたことがある。労働時間短縮に逆行する法改正が同時に進んだことも、過労死を象徴とする長時間労働につながった。

後戻りを許してはならない。労働組合の奮起を

この間、使用者に労働時間の適正把握義務や健康確保措置(医師面接など)が課され、長時間労働を規制する取り組みが進められた。これらは、「少子高齢化に対応し、経済成長と労働者の生活の質の向上を両立させる」という「働き方改革」方針の下に進められたものだ。

1990年代以降の新自由主義政策は、膨大な非正規労働者を生み出し、正規労働者には長時間労働など過重な負担を強いた。一方非正規労働者の低位な労働条件は労働力再生産さえ危うくし、少子化の一因となったといわれている。これは資本・企業の利益のみを追求した結果であり、社会の行き詰まりは明らかであり、軌道修正が必要な段階にある。

しかし今や国会の絶対多数を握った自民・維新政権は、「働き方改革関連法」でわずかに前進した上限規制を後戻りさせようとしている。政府は今春予定していた労基法改正案の国会上程を見送り、さらなる労働時間規制の「全面的な改悪」を目論んでいる。 同会議には連合会長も出席しているそうだが、労働組合の運動は大きく立ち遅れている。これは労働分野における一種のバックラッシュであり、日本社会をさらに壊す試みだ。総力を挙げて阻止すべき課題である。

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非正規労働者の待遇改善を飛躍的に勝ち取ろう!

同一労働同一賃金ガイドライン案示される

パート・有期雇用労働法が成立して5年。今年は法施行後5年の見直しの年にあたっています。労働政策審議会で検討が進んでいたガイドラインの見直しが、2025年11月21日に「ガイドライン(案)」として示されました。いくつかの注目すべき新設事項や変更によって、従来よりも一歩踏み込んだ指針となっています。

非正規にも賞与を

この指針の正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」です。注目すべき新設項目として、まず挙げられるのは「賞与」の項です。

これは「長澤運輸事件」の最高裁判決を踏まえて新設されたといわれています。同事件の最高裁判決は、非正規労働者と正規労働者との一部手当の格差は違法と認めましたが、賃金の主要部分である基本給や賞与などの相違については不合理ではないとし、違法性を認めませんでした。この判決も、一定の条件のもとで格差を容認したものでしたが、一般には「最高裁が基本給・賞与の格差を広く認める方向性を示した」と理解されてきました。

しかし、今回のガイドライン案では以下のように述べています。

「賞与については……様々な性質および目的が含まれうるものであるが……違いに応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず……事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められる……」

つまり、賃金の後払いや功労報償など、賞与支給の性質や目的が非正規労働者にも妥当する場合、正規労働者と均衡のとれた賞与を支給すべきであるということが追記されたのです。 これにより、非正規労働者も闘い方によっては、正規労働者と同様の賞与を要求できます。また会社側は、非正規労働者にだけ賞与を支給しない(あるいは均衡を欠いた支給をする)場合、それが不合理な格差ではないことを客観的に示さなければならなくなりました。

退職手当も該当

また、指針では「退職手当」についても新たに言及しています。内容は賞与に関する考え方とほぼ同様です。 すなわち、非正規労働者だからといって当然に退職手当が支給されないのは不合理であり、退職手当が賞与と同じような位置付けであれば、均衡のとれた支給が要求されます。

これも、非正規労働者への退職金不支給を容認した「メトロコマース事件」の最高裁判決を踏まえて新設されたといわれています。一般に浸透している「非正規への退職金不支給は許される」という理解に、一石を投じる内容となっています。

住宅手当、家族手当にも言及

さらにガイドライン案では、住宅手当と家族手当についても項を新設しました。 住宅手当については、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決で非正規労働者への不支給が不合理ではないと判断されたことを踏まえた内容になっています。

具体的には、「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない」とされています。また注釈として、「転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても……不合理と認められる相違を設けてはならない」と明記されました。 つまり、条件に違いがない場合は、非正規労働者にも住宅手当の支給を求めているのです。

家族手当についてはより簡明で、「労働契約を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれている短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」と、疑いの余地のない表現になっています。

退職・住宅・家族手当への言及は法の画期

そもそも、これら三つの手当は今回のガイドライン案で初めて設定されたものです。従来のガイドラインには、これらについて同一賃金を要求する項目はありませんでした。 パート・有期雇用労働法の制定時、これらの手当に規制をかけることに経営側の抵抗が極めて大きかったといわれています。退職金や住宅・家族手当は、いわゆる「日本型終身雇用」を象徴するものです。 その意味で、ガイドライン案が不十分ながらもこの領域に踏み込んだことは、非正規労働者の闘いにおける大きな前進といえます。

以上の項目以外にも、「(指針に具体例として)該当しない場合であっても……待遇の相違が不合理と認められる可能性がある」という基本的な考え方が新設されました。

「正社員人材確保論」は万能ではない

ガイドライン案の「基本的な考え方」では、非正規・正規間で待遇の決定基準に相違がある場合の取り扱いについて、次のような項を新設しています。 「待遇の相違は……主観的又は抽象的な説明では足りず……客観的および具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない」としました。

ここで触れられているのは、いわゆる「正社員人材確保論」についてです。 つまり、「正社員は将来の役職者候補として、広い職務範囲や異動を前提に育成している」といった主観的・抽象的な説明だけでは、格差の理由として不十分であるということです。

パート有期法成立後の変化

上記2010年代の一連の最高裁判決を受けて同一労働同一賃金の掛け声も、一部手当は取り上げても基本給、賞与、退職金など賃金の主要部分には及ばないか、との声も聴かれたし経営法曹はそのように喧伝もしました。

しかし今回示されたガイドライン案には、そういった一般の受け止めとは相違する新たな内容が付加されています。基本給、賞与、退職金、住宅手当等々賃金のみならず全ての待遇に改めて相違の不合理性を問うものです。

一連の最高裁判決は旧労働契約法20条の規制で争われましたが、同条はパート・有期労働法に廃止、統合されました。パート・有期労働法は8条、9条によって待遇格差を禁じる二通りの条項を持っています。

実際には最高裁判決も一定の待遇格差を不合理とする判断を示していますが、今回ガイドライン案が不合理な待遇格差を禁じる方策をさらに詳細に示したことは、こういった法律の改編、再編と関係しているのかもしれません。

パート・有期労働法はまず9条において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別取扱いの禁止」とタイトルを冠し、「短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれについて、差別的取り扱いをしてはならない」と明記しています。

ここでいう「基本給、賞与、その他の待遇」とは賃金のみならず、教育訓練、休暇、安全衛生、災害補償、解雇などすべての待遇に及びます。この場合の「待遇」は労働契約の内容である労働条件ではなく、雇用管理上の「待遇」一般を規制するとの理解が一般的と言われています。

法律の順番は逆ですが、9条が包括的差別取扱い禁止規定として先行し、その適用がない場合8条で「事業主は・・短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて・・不合理と認められる相違を設けてはならない」と定めています。

8条は個別の「待遇」毎に検討する、という構造となっています。もちろん8条の検討対象も9条と同様すべての「待遇」であることは言うまでもありません。

ガイドライン案を活用して闘おう

パート・有期法を検討した労働政策審議会の報告に、当時の一定の危機感を表している以下の建議があります。

「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には賃金、福利厚生、教育訓練などの面 で待遇格差があるが、こうした格差は、若い世代の結婚・出産への影響により少子化の一 要因となるとともに、ひとり親家庭の貧困の要因となる等、将来にわたり社会全体へ影響 を及ぼすに至っている。

また、労働力人口が減少する中、能力開発機会の乏しい非正規 雇用労働者が増加することは、労働生産性向上の隘路ともなりかねない。」

少子化、ひとり親家庭の貧困、労働生産性の低下などへの言及をみれば、派遣法制定を始め膨大な非正規労働者を生み出した野放図な新自由主義に経営などの一定の反省を 示したモノとも読めるでしょうか。

またこの間の企業内外に膨大な非正規労働者の出現を阻止できなかった正社員労働組合運動も問われています。その意味で太平ビル分会の過去の運動の方向もまた問われねばなりません。

パート・有期労働法、そしてこのガイドライン案は同一企業内での均等・均衡をうたっているにすぎず、非正規労働者全体の苦境を解決する手段としては到底十分なものとは言えません。しかし今回のガイドライン案を詳細にみれば非正規労働者が活用しうる内容が沢山新設されており、まずはこれを足掛かりに今いる企業内で均等待遇を勝ち取りましょう。

念押し

通り一遍の正社員人材確保論はガイドライン案で木っ端みじんですよ。

大体ですね、9条にある通り「職務内容同一短時間・有期雇用労働者であって・・通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者については・・短時間・有期雇用労働者であることを理由として・・差別的取り扱いをしてはならない」のです。この場合待遇のアレコレの検討は要らないのです。

通勤交通費に合理的な待遇格差の理由があるわけないでしょう。

慶弔休暇などは職務の内容に直接関係するものではないでしょう。非正規に格差のある休暇を制定するなら不合理な待遇格差とみなされますよ。最高裁は「慶弔休暇の趣旨は、労働者が慶弔の行事に出席することを可能にする点にある。これは、契約期間の長短(有期か無期か)によって必要性が変わるものではない。」と言ってますよ。

ガイドライン案はガイドライン案だと居直る法律家もいるようですが、パート・有期労働法15条1項に以下のように定めています。

「厚生労働大臣は第6条から前条までに定める措置・・その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする」

ガイドライン案は決して見過ごすことのできない、法律上の裏付けを持ったものとして出されていますよ。

全ての待遇について見直しましょうね。

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復讐のセクレタリーは非正規労働者か

秘書となり加害者に接近する

フランスの非正規は

子供を事故で失った女性が、加害者男性の傷病休秘書代替有期契約労働者として入り込み、男性家族を皆殺しにして復讐を果たすという怖いフランスのドラマです。

傷病秘書が復帰して有期契約期間が終了した女性に、「正社員にならないか」と上司が聞く場面があった。

フランスでは、有期契約は特定の状況下でのみ認められる例外的な雇用で、無期契約が標準的な雇用形態とされている。この上司はともかくも無期契約雇用を申し出る他無かったようである。

同時に有期契約雇用と無期契約雇用の間には労働条件に格差は無く、同じ待遇が原則となっている。

一方日本では有期契約雇用に理由は要らない。フランスの女性も日本では有期契約雇用延長がせいぜいのところであっただろう。

拡大する非正規と待遇格差

こうして大量の有期契約労働者が作り出され、無期契約労働者と比して著しく低位な待遇におかれている。

違法な労働者供給を公認した労働者派遣業合法化を皮切りとして、今日ではかつての日雇い労働市場を彷彿とさせる「スキマバイト」、プラットフォーム労働などITを駆使した新しい不安定就労形態が次々に出現している。

「氷河期世代」と呼ばれる膨大な非正規雇用労働者が生み出され、いまや政府が全国紙一面(6月26日朝刊)を使って「就職氷河期の支援策続々拡充」と広報するまでに危機は深まっている。

EPSON MFP image

格差是正に苦闘する

労働組合の取り組みもあり労働契約法やパート労働法が成立し、ようやく非正規雇用労働者における不合理な差別待遇規制が強められてきた。

しかしその方向は、フランスのような入口における雇用契約締結時の有期契約規制ではなく、現状ある格差是正を主眼としたものになっている。

全国のコミュニティユニオンや合同労組を中心として、非正規労働者が次々と全国で有期雇用の不合理な労働条件是正に向けて裁判闘争をたたかった。

2010年代に入り、これら裁判で最高裁判決が次々に出され、司法判断の一定の方向性が示されてきた。

ニヤクコーポレーション事件、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件、メトロコマース事件、日本郵政の多くの取り組み等々と呼ばれるものである。

これらの多くは労働契約に期間の定めのあることによる不合理な差別待遇を禁止する旧労働契約法20条を巡って争われた。

最高裁は、一部の手当て(通勤手当、皆勤手当など)において有期契約を理由とする差別待遇と認め是正を命じた。

しかし基本給、賞与や退職金など賃金の主要部分については判断を回避するか、有期と無期の職務内容の相違や配転の有無を理由として是正に後ろ向きの姿勢を示した。

また定年後継続雇用の有期労働者の待遇格差は、定年再雇用であることをもって格差を認めるという判断であった。

これを受けて経営者は安堵し、職務内容、労働契約や就業規則の一部手直しをし、同一の労働条件であれば格差は認められないという規制からの逸脱を図ることとなった。

また経営優位の最高裁判断という経営側司法の宣伝を受けてろくさま対策もせず不合理な格差を継続しているところも多い。

非正規の闘いはこれからだ

しかしニヤクコーポレーション判決で明らかなように、有期と無期に労働条件の実質的差異が無い状態での不合理な待遇格差は、明確に違法と判断されている。多くの中小ではこの点の認識が今も甘い。

また待遇格差が合法と判断された例を詳細にみれば、有期と無期の労働条件差異の個々の状況によっては違法と判断される場合もありうるものとなっている。

さらに2018年働き方改革関連法の成立の伴い。旧労働契約法20条とパート労働法が「パート有期労働法(以下法という)」となり不合理な格差是正が一段と進展する法改正となっている。

法9条では差別的取り扱い全般について禁止する規定となっている。職務内容や配転の有無などに有期と無期に実質的に差異のない場合はパートタイム有期雇用労働者であることを理由とする不合理な待遇格差に合理的な理由は無く違法としている。さらに条文中に基本給、賞与と明記し不合理な待遇格差を禁じる対象としている。

また法8条では職務の内容や配転の有無などに有期と無期に差異がある場合も、労契法旧20条より厳格に判断するよう求めている。待遇格差の理由の合理性を判断するにあたって、当該待遇の性質、目的に照らして適切と認められる事情を考慮して不合理と認められる相違を設けてはならない、何のことか分かりませんが、要は待遇差を考えるときに、よりその待遇の性質、目的を待遇毎に厳格に判断することを求めている。

そうすると上記最高裁判決はすべて旧労契法での判断なので、改めて現行パート有期労働法で争えばその結果は不明というほかない。

現に名古屋自動車学校事件最高裁判決(2023年)では定年後継続雇用の有期の待遇に関して、旧労契法20条の判断に即したと思われる下級審の判断が覆され差し戻されている。

有期と無期の格差の存在する、それぞれの待遇の性質、目的を具体的に検討、確定し均衡待遇とするよう求めている。

この裁判の先行きはいまだ不明だが司法の判断の方向は2010年代とは同一ではない。

パート有期労働法14条を活用して

さらに見逃してはならないのは法14条です。1項ではパート有期労働者雇い入れに際し、不合理な待遇格差是正などに向けた雇用主の行う雇用管理の改善措置の説明を義務付けている。

また2項では、有期と無期に待遇の相違があるとき、労働者から求めのあった時は①待遇の相違の内容と理由②待遇について決定にあたって考慮した事項、の説明が事業主に義務付けられている。

厚生労働省は2項をもって「パート有期労働者であることに起因する待遇に係る透明性、納得性が欠如していることを解決する」とうたっている。

加藤厚労大臣(当時)は2018年の国会答弁において、事業主が「十分に説明しなかったという事実は待遇の相違の不合理性」を証明するものであると述べ、裁判上の有力な証拠となることを示唆した。

加藤勝成氏(元厚生労働大臣、現財務大臣)

労働者、労働組合はまずもって有期と無期の間のあらゆる待遇格差を再度洗い出し、業に棚卸させ一々に説明させることから始めよう。法も武器に。

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パート有期労働法について

同一労働同一賃金について

2013年旧労働契約法20条により有期労働者の労働条件が無期労働者に比して不合理な条件であってはならない、と定められた

その後旧労契法20条が2020年パート有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)8条9条に継承、改正して定められた

パート有期法8条9条は以下の構造となっている

パート有期法9条

まず全体を規定するのは9条の「職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)」にある

つまり①職務の内容②配置の変更、において無期労働者とパート有期労働者に相違のない場合、「待遇について差別的取り扱いをしてはならない」としている

①②において相違ない場合は労働条件に差異を設けることはできないのです

これは結構大きな規定で、中小においては①②について合理的に差異が説明できないところが結構存在する

そうするとそこでは労働条件の差異はすべて差別的取り扱いと判断される可能性がある

パート有期法8条

①②において工夫して差異を設けている場合は全体で差別的取り扱いとされることは無いが、次に8条に適合するかどうかが問われる

「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」の部分です

「基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて」検討が求められ、「待遇の性質」「待遇を行う目的」が適切でないと差別的取り扱いとなる可能性が高い

これは旧労契法20条の「その他の事情を考慮して」という表現に比して具体的な労働条件の内容に踏み込んで判断が求められているといえる

しかもその判断は、就業規則などの形式的な定めがあってもより具体的な事実が優先するといわれている

例えば賞与支給をどのような性格のものとして(例えば賃金補給、インセンティブなどなど)支給しているか

例えば精勤手当は従業員の出勤率を確保する目的で支給しているのであれ、ば雇用形態によって支給、不支給が相違することに理由があるのか

など、8条は旧労契法20条に比して待遇の相違により厳しい判断を求めているといってよいと思う

パート有期法14条2項

またパート有期法14条2項 「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない」となっている

パート有期労働者の待遇が相違するとき、労働者は会社に相違の内容、理由、講じた措置について説明しなければならない、となっている

ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件などはすべて旧労契法20条時代の係争であり、同一条件で争ったとしてもパート有期法では違った判断が出る可能性はある

最高裁名古屋自動車教習所事件(2023年7,20)では定年再雇用者の労働条件について、それぞれの待遇の性質、目的をを具体的に検討、確定することを求めて下級審に差し戻した

これはパート有期法8条に沿った判断だといわれている

労働条件の相違はすべて棚卸しをし、いちいち説明を求めねばならないでしょう

以下参照条文

旧労働契約法20条 

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

パート有期法

(不合理な待遇の禁止)

第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

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野崎さんインタビュー2「学者になろうか」

2024年俱留尊山の野崎さん

以前のインタビューで)野崎さんは子供の自分に山谷の番組をテレビで見た、と言うてはりましたね。

テレビ。うちがテレビ屋さんだったから。

山谷の労働者の生活は?って言った時に、昼間からぽつんと公園で佇んで、ほんで魚を切り身で売ってるって。

うちの隣が魚屋だったから、北海道じゃ魚はまるごと買う。信じられなかったな。

それでうちに若い衆が来てたわけ。電気屋さんを始めるときに。うちは北海道でも札幌に近かったから、結構都会に近いところ、そこに中卒の丁稚奉公さんが来てて、住み込みの。昭和30年代、僕が小さいころ。

で、その人たちが親父の下で電気屋さんで働いて。やっぱり地道に地道に、のれん分けして。

お袋は飯場の女将さんみたいな、賄いをして、経理もして、子育てして。

だから、いわゆる。まあ大阪の朝鮮飯場とかいうそういうイメージがちょっとあってさ。そことは結びつかなかったんだよね、

だけど、なんか変わったところがあって、山谷。日本にはこんなところがあるんだなと。

まあ、ちょっと非常に怖かったな、怖い存在。恐ろしい存在。で、そっから、だからどうするんでなくて、やっぱりそこから抜け出すためには上方志向しかない、っていう、頑張って東京出かけて、いい学校に行って、というのを勝手に思ったわけや。

うん。そういうルートから抜け出る道っていうのは。北海道居たくなかったからさ。うん。このままで行くと、電気屋の息子にされるから、電気屋はやりたくない。

で、その電気屋をやらない理由で、東京行って東大に入ったらまあ親父も文句言わんかなあと、いうのが出発点。

それはだけど、それはちょっと違うなあっていうのが全共闘運動だよな。要するに全共闘運動ってのは、そういう根本的なものについてこう考えることだわな、その造反有理とか、帝大解体とかいうのはさ。それはもっと勉強しとけばよかったなって。ハハハ

野崎さん、経済学部やったかな、例えば経済をもっと深くとか、そういうこと?

いやー。もうちょっと漠然としてるな。なんかこう。やりそこなった感があるなあ。だけど結果的に好きなことしてたから、うん。

純粋に学問的にとか、そういうことではない?

そうだね。できたら学者になろうかっていう、公務員か学者だろうなあ。政治ではないんだよな。

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野崎さんインタビュー 「出ていきなさいとは言われなかった」

(2019年金毘羅さん参拝の野崎さん)

最近ここ何年間か泊さんや野崎さんと話ができるようになって、家に帰って「今日は泊さん、こんなこと言ってた、野崎さんはこんなんやで」とかいうような話を嫁はんにするわけです。まあ、わからんのよね、その人は何をしている人なのか、っていう。

ははは

「若い時から釜ヶ崎で労働運動やってんねんで」「就職したことないの?一回も会社従業員とかになったことないの?」かと、「いやなったことない、いや、まあ日雇いで行ったりしてるで」と言うような話なんだけど、「それで結婚してて、奥さんは何も言わへんの?」と言う。「そこは知らんけどな」そういう話を毎回してるわ。

でもそれは半分の真理だよな、嫁さんのお陰でっていうのは。泊さんもそうだし僕も嫁さんおらんかったら絶対できない。理解がないとな、全部良しとせんでも、まあしゃあない、と。

「出ていきなさい」とは言われなかった。

出て行けとはいわれない、か。泊さんも野崎さんも、奥さんを盛大にたたえる会をせなあかんちゃいますか。西成分会は。

いや、それは距離を置いてるんじゃない。

そんなこと言ったら怒る

ていうか関わりたくないんじゃない、これ以上は。

なるほど。

うん、好きなことはしといてもいいけど、うんうん、それ以上は関わりたくない。

言うてくるな、と。

て言うか、まあそういうこともあるよな。うん。まあ。だからそういう意味で逃げ切ったっていう感じだな。社会的、模範的規範から外れて、もう。結論的にはどうかっていうところまで。

でもよかったなあと思うよ、わし。いろんなことを経験して。

後はやっぱりお迎えとどう立ち向かうっていうぐらいの話だから。

そういう時になんか悔いることあるかな、と。

あー。仮にこれでそのいい会社に勤めたり。いい役所のポストで出世したりして、本当に幸せなことがあったかなと思ったら、それはないんじゃないかな、と。

みんな人生に悩みをもって、一番、だから20歳の時に社会、レールから外れて。色んなことあったけど、まあ、それはそれでよかったなと思うけどな。

いやあ、もっとうまく立ち向かえばもっといいものもあったのかもしれないけど。

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年収の壁を乗り越え、パートタイマーの低賃金を打ち破ろう

政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を打ち出しています。直接には壁を意識した調整を克服し就労を拡大させようとするものですが、その影響はパートタイマー労働者の働き方に変動をもたらすものです。実際に働き方は変わるのでしょうか。

新たな年収の壁

支援パッケージでは「短時間雇用者の106万円」と「第3号被保険者の130万」を対象としています。これはいずれも有配偶者女性の年収の制約という面が大きいのですが、特に106万円は2016年から始まったパートタイマー(週20時間以上、月収8.8万円以上)への被用者保険への加入義務化がもたらした新たな壁です。130万円の壁は年金、健保、介護保険などの社会保険料負担を回避するため、有配偶者女性の働き方を大きく制限してきたといわれてきました。具体的には収入が壁を越えないようにその手前で就労調整が行われてきました。106万の新たな壁も同様の制限を課するものとなると懸念されています。

106万は壁となったか

ではパートタイマーへの被用者保険の拡大は実際に新たな壁として立ちはだかっているのでしょうか。下図(お茶の水女子大学永瀬伸子教授による)を見てください。「第1号被保険者」とは厚生年金被保険者のうち民間事業所に使用されるものを言います。縦軸は人数、横軸は月収を表しています。グラフは被用者保険の拡大が始まった2016年から2020年までの短時間被保険者の推移を表すものです。高い方の折れ線グラフ⑥から➉が女性、➉は拡大が始まった2016年、⑥は直近の2020年を表します。そうすると➉の拡大が始まった年の細かい破線から⑥の実践まで人数は高くなり(増加)月収のピークは右に移動(これも増加)しています。人数の増加は2016年が被保険者数501人以上の事業所をパートタイマー加入の対象としていたものが2022年の101人以上への拡大を経て2024年には51人以上の事業所へと拡大していっている結果です。月収の増加は壁を越えたパートタイマーの賃金が増加していることを示しています。グラフの対象期間を考えると賃金単価のアップはさほどではなかったと思われます。要因としては個々の労働者の働く時間数の増加があったと推定できます。つまり壁を越えることでパートタイマーの働き方の変化がおこり始めたといえるのです。

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年収の壁は変動しつつある

新たな106万円の壁も、その他従来の壁も有配偶女性の収入制限の問題とされてきました。しかし実際には進んで低賃金を選択する「主婦のパートタイマー」の存在は、他のそれ以外のパートタイマー賃金を低く留める錘として作用してきた側面があります。最近よく言われる単身女性労働者の低賃金の一因ともなっていると考えられています。一方事業主にとっては社会保険料事業主負担無しで低賃金パートを雇用できる「パートに安く働いてもらう」都合の良い制度でした。しかし既に働く女性の意識や生活全般の変化は従来の制度の枠を越えていく方向を示しています。国民年金3号被保険者制度の見直しが目前に迫っているといわれていますが「男は外で働き、女は家庭を守る」というかつての姿が大きく変わり、制度が息を切らして追いかけている現状の一断面ではないでしょうか。

「年収の壁・支援強化パッケージ」で壁を越えよう

106万円の壁を前にしたパートタイマーの統計の推移は、実際に壁を越える選択をする人の増加と、収入の増加を示しています。これから壁を越えようとしている人も、すでに壁を越えた人も互いに満足いく結果を生み出すのが労働組合の役割です。「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用しパートタイマー、非正規労働者の賃金引き上げを勝ち取りましょう。

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辺野古に行ってきました

最前線と思いきや

沖縄県による設計変更不承認を、国が代執行という強行突破で押しつぶし間を置かずに着工する、という緊迫局面にある辺野古に先週行ってきました。

辺野古のゲート前では連日午前9時、午後0時、午後3時の三回、工事トラックの搬入時間に合わせて座り込み抗議行動が行わなわれています。

実際にトラックの出入りを止める行動と聞いており、過去には逮捕者も出ていることもあり、多少緊張して那覇から現地に入りました。ところが最初に目にしたのはゲート正面で出入りのトラックを監視記録している女性がトラックの運転手に手を振っている姿でした。そして結構な数の運転手が手を振り返しています。なにかホットするような光景です。

時間になると少し離れたテントで休憩していた参加者が三々五々歩いてゲート前に移動します。ゲート前には東京の警備会社の警備員(多分沖縄の人たちだと思うのですが)が姿勢を正して一列に並んでいました。

この日は那覇で申し入れ行動もあった関係か座り込み参加者は20名弱、多少心細くなりながらゲート前に椅子とプラカードを持ち込んで座り込みを始めました。しばらくは集会の進行の後ろで警備会社が何やら「座ったらあきませんよー」という意味のことをマイクを使って放送しているのですが進行の妨げになるほどではありません。そうこうしているうちに気が付くとゲート前車道には大きなダンプカーが何台も並び始めていました。

結局ダンプカーはまっすぐの道路のはるか遠くまで並び最後尾は見えませんでした。そうこうしているうちに出動服を着た沖縄県警機動隊が座り込みの前面に出てきました。と同時に町でよく見かける交通取り締まりをする格好の警察官も数名出てきました。交通量は少ないとはいえ、なんせ片側一車線の道路のはるか向こうまでダンプカーが塞いでおり交通整理もしなければなりません。

それでも集会は続き、参加者から一言と言われ「大阪の全港湾建設支部です」と挨拶したところ参加者の多くが支部OBのM氏を知っており、歓迎の拍手をいただきました。この間も県警は「退かんと排除する」とアナウンスしてましたが集会を妨害するほどの音量は出しませんでした。集会は結局30分以上続き参加者の発言も出尽くしたかという頃、県警から「排除するぞ、でも感染症の状況を鑑みこっちも身体接触はしたくないから退いてくれんか」と通告があり、機動隊員が適度の距離から「退いてくれ」と言ってきました。大半の人は一応立って機動隊員の誘導でゲート正面から移動しましたが(私もです)気合の入った人は「わしは退かんことにしとる」と言って機動隊員に担がれて排除されました。機動隊員には集会主催者から「手荒なことはするなよ」と注意が飛んでいました。

ゲート前から排除されたので向かい側歩道に渡ろうとすると機動隊員が寄ってきて「車が来るから危ない、ちょっと待ってから渡ってください」と声掛けがあり車の途切れで「どうぞ」と誘導してくれました。写真からもわかるように機動隊員も大柄な人は少なく、威圧的な態度も示していないようでした。結局ダンプカーを30台以上足止めしたようです。

この日は座り込み参加者は少数で、女性と高齢者が過半でした。かつて全港湾のピケット行動に参加した経験から、労使紛争にもかかわらず機動隊が出てきた段階であっという間に排除される、といのが常態でした。そこからいうとゲート前のピケットは法律上の保護も期待できず物理的抵抗力も限られているにも関わらず、行動に参加したものから言えばある程度満足いく阻止行動が出来ている、という不思議な光景でした。

阻止行動の合間に辺野古の集落を訪ねてみました。屋並みの姿はやはり大阪とは大きく違うのですが、なんだかバラバラっと低い民家が広がっている小さい小さい集落、という印象でした。一方東の海側には広大な米軍基地が広がり、始終ヘリコプターの騒音が聞こえていました。

辺野古集落の様子

もちろん警察が無理な暴力行使をしないのも、工事車両が整然と集会終了を待っているのも、沖縄の声の過半がこの工事強行に反対している「力」があるからこそだと思うのですが、それでもやはり現地での悠然とした(警察官も)行動には意外の感を持ちました。同時にゲート前と辺野古集落に行くとよくわかるのですが、今でさえ米軍基地に囲まれている小さい小さい辺野古にさらに米軍飛行場を持ってこようとする非道さ、辺野古←名護←沖縄←日本国民の無関心←日米軍事同盟に押しつぶされる姿に見えました。

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「年収の壁」のむこう

「年収の壁」がテレビニュースや新聞に盛んに取り上げられています。人手不足を解消の為などと言われていますが、「壁」が何種類もあり、年金や健康保険、税金なども絡んで複雑怪奇。太平ビル分会などのパート女性労働者などでは、うっかり「壁」を越えてしまって手取りの減った夫に殴られちゃった人まで居て、身近であってまた案外大きな背景を背負った社会全体に関わる問題となっています。

幾つもある「年収の壁」

女性短時間パート労働者が意識する「年収の壁」は大体100万円前後に集中しています。自身に所得税が課税される103万円の壁。配偶者の健康保険扶養家族に入れる130万の壁。そして最近にわかに出現した、自身が健康保険、厚生年金に加入しなければならなくなる106万円の壁。この他にも個別企業の賃金規定に由来する壁など様々な壁が林立しています。

さらに話をややこしくしているのは、それぞれの数字の中身が微妙に違っているのです。103万円には賞与や残業代などを含む実際の年収。一方106万円は計算上の「所定内」賃金で、その他残業代など一切含まず。ところが130万円には賞与残業代は言うに及ばず交通費や失業手当なども含まれます。分かりにくいでしょう。

130万円の壁を越えると

「壁」があることによって年間の働く総時間を一定以下に抑えようと年初から入念に計画する人が居たり、時給が上がると「壁」にぶち当たるので賃上げは歓迎しない、とかいう奇妙な現象が起こっています。年収130万円未満だと配偶者の健康保険の被扶養者認定が受けられ、自身が健康保険料を払う必要はありません。厚生年金や健康保険は、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上(週30時間一日6時間程度)働く必要があるので自身は厚生年金に加入せず、保険料も発生しません。自身の年金は国民年金「3号」被保険者となり、これまた保険料は発生しません(年金給付はあります)。

つまり130万円を以上になると自身で国民健康保険に加入しなければならず、例えば大阪市では毎月約13000円くらいの保険料となります。国民年金では保険料を支払わないで済む「3号」から「1号」に変わり毎月16250円の保険料となります。そして「1号」も「3号」も年金の支給額は同じです。間違って131万円にしてしまうと保険料だけで年間30万以上発生するのです。そしてこの健康保険の被扶養者認定は企業によっては夫の賃金の「配偶者手当」の支給基準となっていたりすることもあり、夫の収入のダウンに直結するのです。冒頭の夫に殴られちゃった組合員はこのケースでした。後で聞くと夫は「離婚するっ」とまで逆上しおさめるのに難儀したそうです。

この社会保険加入要件は2016年からの健康保険、厚生年金の適用拡大で一部変動しており、それが106万円の壁につながっていきます。

新たな106万円の「壁」

社会保険の加入要件は、従来週や一日の所定労働時間が常用労働者の4分の3以上でした。短時間パートで働く女性は通常勤務先の社会保険には加入せず、多くは夫の健康保険の扶養家族となり、国民年金の3号被保険者となっていました(加入したいと希望しても話も聞いてもらえませんでした)。ところが政府は年金財政のひっ迫などを理由に2016年から健康保険、厚生年金の適用拡大の方向に舵をきりました。現在では従業員数(4分の3基準で厚生年金に加入している人数)101人以上、来年10月からは51人以上の企業に働く週に20時間以上働き、所定内賃金(労働契約の時間給×月所定労働日数)が月額88000円 (年額約106万円)以上のパートは健康保険、厚生年金に加入し、保険料は賃金から控除することとなっています。

ここでも106万円を超えると従来夫の健康保険の扶養家族であり、国民年金の3号被保険者であったものが、自身で健康保険、厚生年金に加入することとなり、新たに健康保険料と厚生年金保険料の支払いが発生します。月額88000円ならば大阪の協会けんぽ健康保険料月額4500円ほど、厚生年金保険料は月額約8000円ほどになり、年収106万円で保険料年額約16万円となります。これも結構な負担増といえます。しかしこの負担増は一方では健康保険の傷病手当などの給付が受けられたり、年金受給額に反映したりするので130万円の場合のようにまるでやらずぶったくり、というわけではありません。

EPSON MFP image

政府の「壁」越え対策は

つまり130万円にせよ106万円にせよ「年収の壁」をパート労働者が超えてしまうと大きく自身の手取りや世帯収入が減ってしまう結果に結びつくのです。厚生労働省によると昨年10月の適用拡大で新たに社会保険加入の判断に迫られたパート労働者のうち、働く時間を増やして収入増で負担増を乗り切った人が21%、働き方はそのままで加入した人は31%、収入を106万円未満に減らした人が48%だったそうです。

そこでこの10月から政府は特に106万円の壁に対する「助成金」をひねり出してきました。労働者の負担増に対策をした企業に対し1,2年目は一人当たり20万円、3年目は10万円、計50万円の助成金を支給することとしました。上に述べた自身に新たに発生する保険料年額約16万円を、企業が「手当」として労働者に支給すると(つまり労働者は保険料を支払っても手取りは変わらない)助成金が支給されます。さらにこの手当は社会保険の保険料算定対象としないというのです。同一企業内で、一方には国から助成金まで出して事実上の保険料負担を行い、他方ではすでに社会保険に加入している労働者との均衡など取れるのでしょうか。

130万円の壁は、越えても2年間は事業主が「一時的な超過だ」と証明するだけで夫の加入する健康保険の扶養家族に引き続きなることが出来る、としています。

なんだか106万円は無理筋の助成金までひねり出して「さあ越えろ」と言い、130万円はしばらく目をつぶるけど「無理して越えなくても良いよ」と言っているようです。国の施策がこんな中途半端なことで良いのでしょうか。

次に控える3号被保険者問題

政府の施策が一貫性を欠くように見える背後には国民年金3号被保険者の問題があります。1986年国民年金法が改定され(新法)、従来厚生年金や公務員の共済年金などの被用者年金と、自営業者、農業者などが加入するの国民年金など数種の年金制度が並立していたのが、すべての人が国民年金の被保険者となり、同時に被用者年金にも加入するという「二階建て」の制度となりました。自営業などは1号被保険者、厚生年金など被用者年金は2号被保険者となりました。そして2号被保険者の配偶者で一定の収入要件にある人は3号被保険者となりました。この3号被保険者が130万円の壁や新たに106万円の壁と強く結びついているのです。

3号被保険者は106万や130万の壁で触れたように自身で保険料負担はありません。一般的には2号被保険者の加入する被用者年金が負担する保険料が3号の分も含めて国民年金会計に支払われている、と言われています。しかし実際は3号被保険者のいる2号被保険者と、単身の2号被保険者では、収入が同じであれば支払う保険料は全く同額です。正確にいえば2号被保険者の配偶者の国民年金保険料はその企業などの被保険者全体で支払っている、ということです。そして40年間保険料を支払った自営業の1号被保険者の受け取る年金は、40年間3号被保険者だった人の受け取る年金額と同一です。

1986年以前の旧国民年金法(旧法)では、現在の3号被保険者に該当する人は国民年金の加入は「任意」でした。1961年に国民年金制度が始まり国民皆年金といいつつ年金受給者もまだあまりおらず、年金に加入しない人も多くいました。特に家庭の主婦層は「任意加入」としたので未加入者が多く、将来無年金者となる恐れがありました。

旧法当時の厚生年金などは今でいう2号の年金に3号宛ての加給金を付加することによって配偶者の年金とする、としていました。つまり年金の配偶者手当、あくまで年金の名義は2号被保険者ですが。年金も世帯単位の考え方です。新法ではさすがに年金は個人に属するものとして、配偶者も3号被保険者として独立の年金を受給できるように設計したまではよかったのですが、何故か上記のように保険料負担のない著しく均衡を欠く存在となってしまったのです。自営業者の配偶者は国民年金の1号被保険者となり保険料負担が発生しています。一方3号は保険料負担はありません。制度が歪んでいます。

現在3号被保険者は約700万人と言われています。新法のできた約40年前はさらに膨大な数であったと思われます。従来の任意加入制度で未加入であったこれらの人の強制加入保険料問題や、専業主婦の年金は夫の年金の付けたし、という古い概念に引きづられ中途半端で奇妙な3号被保険者制度となったものです。そして現在の「年収の壁」はこういった年金制度のゆがみと同根であり、3号被保険者の適切な改変なしては「壁」を乗り越えることはできません。

「壁」を越える政府自民党

厚生労働省によると昨年10月から106万円の壁に直面している101人以上の企業にいるパートタイマーは45万人、来年10月からの51人以上の企業では15万人、合計60万人の労働者がいるとみています。この年収の壁はこういった直接影響を受ける60万人の問題に限らず、幅広い労働者の生活と働き方に大きな影響を与えるものと思われます。年収の壁があれば多少の時間給の引き上げは歓迎されず、こういった意識の労働者が多数を占めることによってパート労働者の低賃金が長年固定化されてきたといえます。企業側も低廉な労働力が労せずして確保できるのですから制度は強固なものとなってきました。実際106万の壁の対象者が増えた背景には近年の最低賃金の引き上げの影響があるといわれています。

3号被保険者の制度改変は避けられないといっても、経営者の保険料負担増への抵抗など順調に進むとは思われません。人手不足の解消にとどまらず「「年収の壁」を越えようとすれば、多数の非正規労働者の低賃金や世帯の家計収入の大変動から家族の姿の変動、年金制度の組み直しなど社会の全般にその影響が及ぶことは必至です。政府自民党の「働き方改革」は掛け声だけだと難じている労働組合からは、例えば3号被保険者の問題に切り込む政策などはほとんど聞こえて来ず、労働組合の外にいる人達への浸透を岸田首相に許している現状を巻き返さなければなりません。