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非正規労働者の待遇改善を飛躍的に勝ち取ろう!

同一労働同一賃金ガイドライン案示される

パート・有期雇用労働法が成立して5年。今年は法施行後5年の見直しの年にあたっています。労働政策審議会で検討が進んでいたガイドラインの見直しが、2025年11月21日に「ガイドライン(案)」として示されました。いくつかの注目すべき新設事項や変更によって、従来よりも一歩踏み込んだ指針となっています。

非正規にも賞与を

この指針の正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」です。注目すべき新設項目として、まず挙げられるのは「賞与」の項です。

これは「長澤運輸事件」の最高裁判決を踏まえて新設されたといわれています。同事件の最高裁判決は、非正規労働者と正規労働者との一部手当の格差は違法と認めましたが、賃金の主要部分である基本給や賞与などの相違については不合理ではないとし、違法性を認めませんでした。この判決も、一定の条件のもとで格差を容認したものでしたが、一般には「最高裁が基本給・賞与の格差を広く認める方向性を示した」と理解されてきました。

しかし、今回のガイドライン案では以下のように述べています。

「賞与については……様々な性質および目的が含まれうるものであるが……違いに応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず……事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められる……」

つまり、賃金の後払いや功労報償など、賞与支給の性質や目的が非正規労働者にも妥当する場合、正規労働者と均衡のとれた賞与を支給すべきであるということが追記されたのです。 これにより、非正規労働者も闘い方によっては、正規労働者と同様の賞与を要求できます。また会社側は、非正規労働者にだけ賞与を支給しない(あるいは均衡を欠いた支給をする)場合、それが不合理な格差ではないことを客観的に示さなければならなくなりました。

退職手当も該当

また、指針では「退職手当」についても新たに言及しています。内容は賞与に関する考え方とほぼ同様です。 すなわち、非正規労働者だからといって当然に退職手当が支給されないのは不合理であり、退職手当が賞与と同じような位置付けであれば、均衡のとれた支給が要求されます。

これも、非正規労働者への退職金不支給を容認した「メトロコマース事件」の最高裁判決を踏まえて新設されたといわれています。一般に浸透している「非正規への退職金不支給は許される」という理解に、一石を投じる内容となっています。

住宅手当、家族手当にも言及

さらにガイドライン案では、住宅手当と家族手当についても項を新設しました。 住宅手当については、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決で非正規労働者への不支給が不合理ではないと判断されたことを踏まえた内容になっています。

具体的には、「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない」とされています。また注釈として、「転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても……不合理と認められる相違を設けてはならない」と明記されました。 つまり、条件に違いがない場合は、非正規労働者にも住宅手当の支給を求めているのです。

家族手当についてはより簡明で、「労働契約を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれている短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」と、疑いの余地のない表現になっています。

退職・住宅・家族手当への言及は法の画期

そもそも、これら三つの手当は今回のガイドライン案で初めて設定されたものです。従来のガイドラインには、これらについて同一賃金を要求する項目はありませんでした。 パート・有期雇用労働法の制定時、これらの手当に規制をかけることに経営側の抵抗が極めて大きかったといわれています。退職金や住宅・家族手当は、いわゆる「日本型終身雇用」を象徴するものです。 その意味で、ガイドライン案が不十分ながらもこの領域に踏み込んだことは、非正規労働者の闘いにおける大きな前進といえます。

以上の項目以外にも、「(指針に具体例として)該当しない場合であっても……待遇の相違が不合理と認められる可能性がある」という基本的な考え方が新設されました。

「正社員人材確保論」は万能ではない

ガイドライン案の「基本的な考え方」では、非正規・正規間で待遇の決定基準に相違がある場合の取り扱いについて、次のような項を新設しています。 「待遇の相違は……主観的又は抽象的な説明では足りず……客観的および具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない」としました。

ここで触れられているのは、いわゆる「正社員人材確保論」についてです。 つまり、「正社員は将来の役職者候補として、広い職務範囲や異動を前提に育成している」といった主観的・抽象的な説明だけでは、格差の理由として不十分であるということです。

パート有期法成立後の変化

上記2010年代の一連の最高裁判決を受けて同一労働同一賃金の掛け声も、一部手当は取り上げても基本給、賞与、退職金など賃金の主要部分には及ばないか、との声も聴かれたし経営法曹はそのように喧伝もしました。

しかし今回示されたガイドライン案には、そういった一般の受け止めとは相違する新たな内容が付加されています。基本給、賞与、退職金、住宅手当等々賃金のみならず全ての待遇に改めて相違の不合理性を問うものです。

一連の最高裁判決は旧労働契約法20条の規制で争われましたが、同条はパート・有期労働法に廃止、統合されました。パート・有期労働法は8条、9条によって待遇格差を禁じる二通りの条項を持っています。

実際には最高裁判決も一定の待遇格差を不合理とする判断を示していますが、今回ガイドライン案が不合理な待遇格差を禁じる方策をさらに詳細に示したことは、こういった法律の改編、再編と関係しているのかもしれません。

パート・有期労働法はまず9条において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別取扱いの禁止」とタイトルを冠し、「短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれについて、差別的取り扱いをしてはならない」と明記しています。

ここでいう「基本給、賞与、その他の待遇」とは賃金のみならず、教育訓練、休暇、安全衛生、災害補償、解雇などすべての待遇に及びます。この場合の「待遇」は労働契約の内容である労働条件ではなく、雇用管理上の「待遇」一般を規制するとの理解が一般的と言われています。

法律の順番は逆ですが、9条が包括的差別取扱い禁止規定として先行し、その適用がない場合8条で「事業主は・・短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて・・不合理と認められる相違を設けてはならない」と定めています。

8条は個別の「待遇」毎に検討する、という構造となっています。もちろん8条の検討対象も9条と同様すべての「待遇」であることは言うまでもありません。

ガイドライン案を活用して闘おう

パート・有期法を検討した労働政策審議会の報告に、当時の一定の危機感を表している以下の建議があります。

「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には賃金、福利厚生、教育訓練などの面 で待遇格差があるが、こうした格差は、若い世代の結婚・出産への影響により少子化の一 要因となるとともに、ひとり親家庭の貧困の要因となる等、将来にわたり社会全体へ影響 を及ぼすに至っている。

また、労働力人口が減少する中、能力開発機会の乏しい非正規 雇用労働者が増加することは、労働生産性向上の隘路ともなりかねない。」

少子化、ひとり親家庭の貧困、労働生産性の低下などへの言及をみれば、派遣法制定を始め膨大な非正規労働者を生み出した野放図な新自由主義に経営などの一定の反省を 示したモノとも読めるでしょうか。

またこの間の企業内外に膨大な非正規労働者の出現を阻止できなかった正社員労働組合運動も問われています。その意味で太平ビル分会の過去の運動の方向もまた問われねばなりません。

パート・有期労働法、そしてこのガイドライン案は同一企業内での均等・均衡をうたっているにすぎず、非正規労働者全体の苦境を解決する手段としては到底十分なものとは言えません。しかし今回のガイドライン案を詳細にみれば非正規労働者が活用しうる内容が沢山新設されており、まずはこれを足掛かりに今いる企業内で均等待遇を勝ち取りましょう。

念押し

通り一遍の正社員人材確保論はガイドライン案で木っ端みじんですよ。

大体ですね、9条にある通り「職務内容同一短時間・有期雇用労働者であって・・通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者については・・短時間・有期雇用労働者であることを理由として・・差別的取り扱いをしてはならない」のです。この場合待遇のアレコレの検討は要らないのです。

通勤交通費に合理的な待遇格差の理由があるわけないでしょう。

慶弔休暇などは職務の内容に直接関係するものではないでしょう。非正規に格差のある休暇を制定するなら不合理な待遇格差とみなされますよ。最高裁は「慶弔休暇の趣旨は、労働者が慶弔の行事に出席することを可能にする点にある。これは、契約期間の長短(有期か無期か)によって必要性が変わるものではない。」と言ってますよ。

ガイドライン案はガイドライン案だと居直る法律家もいるようですが、パート・有期労働法15条1項に以下のように定めています。

「厚生労働大臣は第6条から前条までに定める措置・・その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする」

ガイドライン案は決して見過ごすことのできない、法律上の裏付けを持ったものとして出されていますよ。

全ての待遇について見直しましょうね。